世界初の営業用ハイブリッド気動車のキハE200形(キハE200-1)
先日から電車の“車両/編成の向き”について書き始めていますが、見た目にもわかりやすい例が国鉄の新性能電車になるので、残り少なくなった国鉄形の鋼製電車の写真ばかりアップしていました。
特にここ数年、国鉄形車両は115系や117系、485系ばかり撮っていましたので、同じような車両ばかり。
しかも、地味な地味な中間車で…
本当に申し訳ありません。
なので今回は中間車ではなくて、世界初のハイブリッド気動車のキハE200形のトップナンバー、キハE200-1(長コミ)をアップします。
キハE200-1(長コミ) 2010年5月30日 小淵沢駅
上の写真をクリックすると大きな写真が表示されます。
この写真は中央本線甲府〜小淵沢間で「SLやまなし号」が走ったときで、牽引機 D51 498 のまわりに人集りができたときに小海線ホームで撮影したものです。
通常、キハE200形は2両編成で運行されていますが、このときは臨時列車のため単行のお昼寝運用が組まれていたので、じっくり撮影することができました。キハE200形を撮影する絶好のチャンスでしたが、鉄道ファンの皆さんは D51 498 だけに夢中でした。
* * *
JR東日本では2003(平成15)年にキヤE991形(その後、クモヤE995形に改造)“NE (New Energy) Train”を試作してハイブリッドシステムの研究試験が行われ、その技術を活用した量産先行車両として2007(平成19)年にキハE200形が登場しました。
キハE200形はハイブリッドシステムを搭載した営業用としては世界初の鉄道車両で、3両が小海線営業所に配置され、2007(平成19)年7月末に営業運転を開始しました。
最近のJR気動車のようにコモンレール方式の燃料噴射装置を使用した450PS(331kW)の機関(エンジン、DMF15HZB-G)を後位側の床下に搭載していますが、誘導発電機DM113でエンジン回転を電気的エネルギーに変換し(出力270kW)、そのエネルギーと前位側の屋根上に搭載したリチウムイオン蓄電池の電気的エネルギーを組合わせて主電動機(モーター、MT78)を駆動するシリーズハイブリッドシステムを採用しています。
キハE200-1の発電用機関(DMF15HZB-G)
このほかに、主だった機器としては制御用主変換装置(インバータ・コンバータ装置)が床下に搭載されています。
力行時は、発電機からの電力と蓄電池からの電力を用いてインバータによりモーターを駆動し、減速時はモーターを発電機として利用し、運動エネルギーを電気的エネルギーに変換して蓄電池に充電しています。
キハE200-1の主変換装置と空気圧縮機(右)
キハE200形は前位台車のみモーターを装架した動台車で、E531系のDT71を基本としたDT75を履いています(後位側の従台車はTR260)。
基礎ブレーキ装置は内側のみ(踏面片抱き式)で、車体端部寄りの軸には空転・滑走防止対策としてセラミック噴射装置(セラジェット)が取り付けられています。
エンジン駆動の気動車ではないので、下写真のようにエンジンから延びる推進軸は見当たりまりません。
キハE200-1の動台車(DT75)
キハE200形のハイブリッドシステムは、
(1) 発車時は蓄電池の充電電力を使用してモーターを回転させ(エンジン停止)、
(2) 加速時はエンジンを動作し、発電して蓄電池電力と合わせてモーターを回転させる。
(3) 減速時はモーターを発電機として利用して、回生させた電力を蓄電池に充電する(エンジンは停止または排気ブレーキを動作)、
となっています。
このシステムは「リゾートビューふるさと」のHB-E301形に活用されましたが、2015(平成27)年度に登場予定の“仙石線・東北本線接続”快速列車(仙台~石巻間)のHB-E210系にも引き継がれそうです。
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